6月29日(土)「子ども大学くにたち」2024年度第1回授業を行いました

6月29日、国立学園小学校で、2024年度・第1回目となる「子ども大学くにたち」の授業を行いました。今回ご登壇くださったのは3名の先生です。

「ロボットとは?」:東京大学特任教授・ロボット研究の第一人者 淺間 一 先生
「人工知能とは?」:第15代 早稲田大学総長&人工知能研究の第一人者 白井克彦先生
「漢字とは?」:国立学園小学校の名物校長 神林照道 先生

左から、神林先生、白井先生、淺間先生。

「ロボットとは何か?」「“ロボット“という言葉がいつから・どのような場面で使われ始めたか」などの基本的なことから、現在最も活用されているのは「人型ロボット」よりもじつは、「産業用ロボット」だということなどを、やさしい語り口で、画像を交えてわかりやすく紹介してくださいました。(ちなみにロボットは100年ほどまえ、戯曲で登場したのがはじめてだといわれています)

熱心にメモする学生たち。

「近年注目されるロボット」として、手術用のロボットや、Amazonなどの巨大な倉庫で荷物のしわけや荷詰めなどの発送作業を分担しておこなうロボット、ファミリーレストランで見かけるネコ型の配膳ロボットについても紹介がありました。学生(子ども大学では参加する小学生を「学生」と呼びます)からは「知ってる!」「見たことある!」と元気な声が上がりました。
現在先生が開発されているロボットは「自律分散型ロボット」といって、「一台一台のロボットはそれほど賢くないけれど、集まって協力すれば沢山の難しいことができる」そうです。
淺間先生は、2011年の東日本大震災・福島第一原発事故以降、福島原発廃炉作業にかかわられています。福島第一原発では、なんと数十種類ものロボットが活躍していると聞くと、会場からどよめきが。

ロボットの性能を競う「ロボット競技会」で、ロボットが奮闘する様子を動画で紹介。ロボットの失敗シーンにドッと笑い声が上がりました。
熱心な「学生」からは、「どうしてロボットを倒れないようにできないの?」「ロボットが倒れないようにするにはどうすればいいのか、計算プログラムみたいなものを入れたらいいのでは?」などと、鋭い質問も。丁寧に質問に答えてくれた先生は、「将来、ぜひロボット学者になってね」とエールを送りました。

白井先生は第二次世界大戦が終わった翌年に国立学園に入学され、その後、国立中学(現・第一中学校)に進学。
「こうして(国立市の)みなさんの前でお話できるのは大変うれしい」
と、授業の冒頭で、ラジオなどの機械をいじるのが大好きだったこと、中学生の頃には友人たちと「影絵劇」を作り、夏休みに幼稚園の子どもたちに披露したこと、当時は市内に街頭が少なく真っ暗ななか友人と二人で路面工事中の大きな穴に落っこちたことなど、国立ですごした小中時代の思い出を語ってくださいました。

中学卒業時には、「大人になっても勉強し続けなければいけない」「仲間を大切にしなければいけない」といった思いから「何か団体の活動を続けよう」と考え、合唱団「国立ときわ会」をつくられました。
この「国立ときわ会」は、なんと設立からおよそ70年近く経った今でも活動されているそうです。
白井先生は、早稲田大学の電気工学科で学び、博士課程の頃、加藤一郎さんというその後の「ロボットの父」と呼ばれた先生らと一緒にWABOT(ワボット)という二足歩行のロボットを作っています。WABOTのWは、WASEDAのWです。

1時間目、淺間先生の授業でも紹介のあったWABOT(ワボット)。

大学では、研究を進めながら、14代総長のお手伝いもされていたという白井先生。
先生は第15代総長でいらっしゃるため、手伝いの期間も合わせるとおよそ16年間大学全体の舵取りをされていたといいます。
先生はおもに「人と機械が会話する」もしくは「人が話していることを機械に認識させること(音声認識)」を研究されていらっしゃいます。例えばSiriは、人の話した言葉を認識して機械に取り込み、自動で文字化してくれます。これが「音声認識」です。
人間の音声、言語を認識するのはとても難しいといいます。
「人類の言語は複雑なことを考える道具にもなるし、人と人との意思疎通、つまりコミュニケーションの道具でもある。となると、いろんな知識とか感情とかがすべて音声の中に入りますよね。その音声を認識するというのはとても難しい技術なのです」

最後にある映像が流れました。

アバターの女性と、大学生が英語で会話している映像です。
これは早稲田大学でも使用されている英会話能力をはかるための会話の一部だそうですが、その会話はとても自然なものです。

「こんにちは!」
神林先生の大きなあいさつにつられるように、子どもたちからも「こんにちは!」と元気な返事が。

さっそく漢字の授業がはじまり、スライドに「木」や「林」など、先生手書きの漢字が映し出されます。
「この漢字の読み方が分かる人? 訓読みは?」
子ども達が手を上げて答えていきます。やさしい漢字なので低学年の学生たちも積極的に参加してくれました。そして、「木」、「林」、「森」に続いて出てきたのは、この漢字。

脇で見ていたスタッフ、大人たちは首をかしげましたが学生からはすぐに手があがります。
先生も少し驚いた様子で「すごいね、これがわかるんだ。高校3年生まででも教えませんよ」と学生を指していきます。
学生たちからは「はやし はやし!」「雑木林」。
いろいろな答えが出るたび、会場からは笑い声や感心したような声が聞こえてきます

学生:「ジャングル!」
神林先生:「ジャングル。どうして?」
学生:「木がいっぱいあるから」
神林先生:「木がいっぱいある。正解〜! さすが!」

答えが出ると拍手が起こりました。もちろん、これらは元からある漢字ではなく創作した漢字です。 この後も次々創作漢字が出てきました。

そして、今度は、「学生」たちがこれまでにない新しい漢字を作ります。
「自分で漢字をつくって前に来て紙に書いてください。何人できるかな? わたしの予想では多くて3人、少なくて0人。思いついた人はどんどん遠慮しないで」
先生が声をかけると、次々に学生が前に出てきました。

上は学生が考えた漢字です。答えは、「カミキリムシ」。神林先生からは10点満点が出ました。
会場から楽しげな笑い声がするなか、最後の授業が終わりました。

今年度第2回の授業は2025年の2月を予定。国際連合大学学長のチリツィ・マルワラさんがご登壇くださいます。(同時通訳付)皆様のご参加を心よりお待ちしております。