第5回「SDGs全国子どもポスターコンクール」審査員による講評(その1)
第5回SDGs全国子どもポスターコンクールについて、2024年12月21日に実施した最終審査会に参加した審査員の皆様から、講評をいただきました。このサイトおよびSNSに順次公開してまいります。
第1弾は、全体講評として、連続して本ポスコン審査員を努めてくださっている5名の方からの講評をご紹介します。
①全体講評
SDGs全国子どもポスターコンクール実行委員長 稲葉茂勝
第5回SDGs全国子どもポスターコンクールへご参加くださった方へ、まずは、深くお礼申し上げます。次に「参加してくださった全ての方へ賞を送りたい」という気持ちを、審査員を代表してお伝えします。
それでも「コンクール」である以上、作品の選考をしなければなりません。けっこう辛い役目です。
そんな中、今年は、【万博とSDGs部門】の受賞作品の選出にあたり、賞の名称を区分することなく、審査の最終段階まで進んだ全ての作品に対し同一の賞を授与することにしました。その理由は、優劣をつけられない! 必ず審査会がもめる!! と判断したからです。一方の【SDGsの目標部門】は、例年同様に各賞を選出しました。
僕はこの5年間、全ての作品に目を通してきましたが、ものすごい数! その中には、どうしても印象に残る作品と、そうでない作品が毎年あります。絵がとても上手だなと思うものとか、もう少し丁寧に描いてくれればよかったのにと感じるものとか……。
昨年度から、紹介文を参照しやすくするため、作品と紹介文が同時に見える応募方法にしましたが、審査員は、審査により長い時間を要しました。
昨年末の12月21日の最終審査会。予備選考をおこなった際に、とくに印象に残った作品のほとんどが、最終段階まで進んでいたことを、僕自身実感。
最終段階の審査では、付箋投票により、一番付箋が多かった作品を「文部科学大臣賞」として決定しました。次の「審査員長賞」も、僕の個人的な意見を主張することはなく、得票数で決定。でも、その2作品は、その図柄や色合いが僕の脳裏から離れない作品でした。 本年もありがとうございました。2月16日、東京大学での表彰式で、より多くの受賞者、御家族様、学校関係者の方々にお目にかかれることを、心より楽しみにしています。
※今年は本コンクール開始5年目ということで、素晴らしいゲストによる記念公演を、表彰式前日の2月15日に、東京都国立市の一橋大学で行う予定です。詳しくは後日HPで発表致します。
②全体講評
SDGs全国子どもポスターコンクール実行副委員長 千葉 均さま
SDGs全国子どもポスターコンクールは、今年で5回目になります。5回ともなると、応募者は入れ替わっているのに、全体的に見てSDGsへの理解度が、どんどん深まっている気がします。
例えば、自分たちが今食べているものは、どういう命の営みのつながりのなかで食品になり、食卓まできているのだろうなどと、きちんと考えられた作品が増えています。本コンクールが始まって1~2年は目標14の応募作品の多くにウミガメが描かれていました。不思議なほど同じような図柄で。ところが3~4年目となるとちゃんと「つながり」を意識した海の生態系が意識された作品が増えてきたような気がします。
本コンクールは、SDGsの目標期限の2030年までの後半に突入します。来年の第6回もSDGsをさらに深く理解した作品の応募を期待しています。
③きむらゆういち賞 絵本作家 きむらゆういち
こうやって見ると、どれもいい作品ばかりで、みんなに賞をあげたいと思うくらい一生懸命描かれています。ピカソとゴッホと、どれが一番いいかなんて言えない、というくらいの力作が並んでいます。そのなかから選ばなければいけないのが役目だから選んだのですが、最後は好みとなってしまったかもしれません。
こうしてみると不思議なことに、僕がいいなと思ったものは、審査員のみなさんも同じように思っていたようで、最終選考でなんらかの賞を取っていました。不思議です。でも不思議というか、やっぱり作品の力があるものが際立ってきているのかなぁと思いました。 今年の「きむらゆういち賞」は、ひと目で全体がつかめる、デザイン的にもすばらしいと思う作品を選びました。下半分が、色を塗られていません。それが、逆に白が生きてくる。使い方がとてもうまい。すばらしいなと思いました。「寄生虫」を振り落とせない、実際のクジラの勢いを感じました。
今年は僕の好きなシャレ的な作品は少なく、違う意味での刺激のある作品が多かったと思いました。
④東京都国立市教育長 雨宮和人
このコンクールも当初に比べて大きな規模になってきました。審査員のなかでも、毎回審査に参加される方と、今回はじめての方とでは、感じ方がまったく違ったのではないでしょうか。
と、言うのは、「平和と公正」の目標16で、ハトが出てくるポスターが多くあります。すると、私の感覚としては「もういいかな?」と。ウミガメ、シロクマ、ハト、天秤なども少し食傷気味です。もっと子どもたちが、自分の頭で考えて、どうひねるか?ということを願ってしまうわけです。
私は、教育長をしているので、市内の学校では、「SDGsの指導は、もっと考えて」ということを言っています。実は、全国の学校でも、SDGsの指導に熱心な教育関係者は、みなさんそう思っているはず。
ところが、毎年、本ポスターコンクールの最終選考に残る作品は、少しずつ変化してきています。本日も、応募者が自分の頭で考えてくれるようになった感じがして、とても嬉しく思いました。
これから子どもたちは、変化が早く複雑化している世の中で、自分の頭で考えるということが、大事!「これからの世界を支えるのは、きみたちなんだから、自分の頭で考えて、自分の言葉で語ってください。そういった学びをしてください」と、ぼくは、言いたいです。SDGsの学習に限らず。
来年度からは、審査員を違う人がやってもいいのかなと思ったりしますが、今回、大幅に新しい審査員が加わりました。とくに女性の審査員が増えたことは、とてもよかったと思います。そんななか、私みたいな審査員がいてもいいのかなとも思っています。
次回もお呼びいただければ、必ず出席させていただきます。本日はありがとうございました。
⑤元外務省在外大使 渡邉優
僕は、本日の審査会で感じたことを一つだけ申し上げます。たくさんありますが。それは、このポスターコンクールの課題が一つのテーマを描くものだということ。ですから応募されるみなさんは、自分が一番感じたことを描いてくれています。それはそれでいいのですが、そのことは、あくまでも「入口」だと、僕は考えているのです。
SDGsには、「テーマ」とよばれる目標が17個、その他に「ターゲット」という「具体的目標」が169個掲げられています。しかも「指標」というものも、232個挙げられているのです。
SDGsは、全てつながっているんです。それは、教育と貧困と飢餓、それから環境問題とが、切り離せないことなどを考えればよくわかります。
ポスターを描く際、自分の選んだテーマを入口にして、子どもたちの視野が、知恵が、そして、実際の行動が、どんどん広がってほしいなどと、僕は、強く願っているわけです。
これが、言いたい一つだけのことですが、追加で、もう一つ。
僕は毎年、年末のこの審査会をとても楽しみにしています。それは、何よりも子どもたちが一生懸命描いている様子と気持ちが、絵を通じて伝わってくるからです。それと今回は、一生懸命なのは子どもたちだけじゃないということが伝わってきました。ご両親や先生方、もしかすると、美術部の先輩たちも、一生懸命に指導したり、アドバイスしたりしている様子が、目に浮かんだからです。
そう思うと、子どもたちに指導したり、アドバイスしたりするというより、子どもたちと一緒になって、視野を、知恵を、そして、実際の行動を、今後どんどん広げて頂きたいと願わざるを得ません。
毎年のことですが、募集開始から締め切りまで、そして締め切りから直ちに予備審査、そして審査会へと、スタッフのみなさんが、今年はセブン-イレブンのみなさんが、そして国連大学の方々が、それぞれの準備で大変だったと思います。本当にみなさんが粉骨砕身をして一生懸命に審査会の場をつくってくださいました。この場を借りて、お礼を申し上げると共に、こうやってみんなが一緒になってやってきた事業を、今後も発展させていきたいと願います。
次は、表彰式です。昨年は、受賞者のお子さんたちはみんなびくびくしてやってきました。でも表彰状をもらって、審査員のお話などを聞いているうちに、どんどん誇らしげになって、目の輝きを増していたようでした。
その様子を見ていて、僕たちは今後もこのコンクールを続けていくためのエネルギーが出てきました。SDGsの目標7は「エネルギーをクリーンに そしてみんなに」です。がんばりましょう。本当に今日はありがとうございました。