第5回「SDGs全国子どもポスターコンクール」審査員による講評(その2)

「SDGs全国子どもポスターコンクール」は2024年度第5回を無事終了、2025年度第6回も引き続き開催予定です。
遅ればせながら、第5回の審査員のみなさまにいただいた講評を公開いたします。X(旧twitter)ですでに発表したものをまとめたものになります。
まずは、第1弾に続き、連続で審査に参加している今人舎代表の中嶋舞子と、今回はじめて参加された方による講評をご紹介します。

⑥株式会社今人舎 代表 中嶋舞子

 このポスターコンクールの審査員の男女比は、今回初めて、女性が半数を超えました。経産省から後援を受けるにあたり、女性の割合が低いことが指摘されました。日本は男女平等が実現されていないことを、世界の国々から指摘されています。
 SDGs の目標5 の達成度も低い。そのSDGs を扱うコンクールですから、経産省の指摘は当然でした。でも、「ジェンダー平等を実現しよう」をポスターに描くには、どうすればいいのでしょうか。今回このテーマ賞に応募くださった作品には、第1回、2回の頃と比べて「よく考えられている!」と感じるものが多くなっています。男女の平等を天秤で象徴させるのではなく、それぞれに工夫を凝らしてジェンダー平等をアピールする作品が増えているのです。男女間に限らず、さまざまな不平等の実態をモチーフにするなど、とてもよく考えられています。
 テーマについてよく考えているのは、どの目標の作品でも見られます。SDGs を理解しようとしていることが、どんどん伝わってきています。それとともに、コンクール自体も成長してきたのだと、第1回からずっと関わってきた女性として、私はとても嬉しく思っています。来年度は、もっともっとそうなってほしいと願っています。ありがとうございました。

続いて、今回はじめて審査にご参加くださったみなさまの講評をご紹介します。

【はじめての審査】
①国連大学広報部長 キキ・ボウマンさま(国連大学学長賞選出/英語講評の要約) 

 私たちが選んだ作品は、Wi-Fiのマークや地球などの形をした積み木が描かれていて、デジタル社会をすべての人に公平に実現しようというメッセージが感じられました。これは、国連と国連大学が、目下、取り組んでいることです。
 国連未来サミットは2024年9月、「すべての人に自由で開かれた安全なデジタル社会をつくろう」といった目標を採択したところで、また、国連大学はというと、学長がAIの専門家であることもあって、現在、AIやデジタル社会について研究しています。
 このような背景から、今日は自然と、国連大学学長賞にこの作品を選びました。それでも、ほかの作品も素晴らしいものばかりなので、審査は難しかったです。今日は本当にありがとうございました。

②2025年日本国際博覧会協会木嶋淳さま(EXPO2025賞選出)

 私は、万博についてこれまで日本全国を回ってお話しをさせていただいてきましたが、お年を召されている方は1970年の万博を当時大変意義あるものとして楽しんだ経験から、2025年もぜひ行きたいというお声を聞くのですが、若い方の声というのは、あまり聞いたことがないという状況でした。
 でも、今回作品を見せていただいて、小学生・中学生の方々が、2025年の万博に期待を寄せている、夢をふくらませているということが実感できて、大変安心いたしました。協会としても、そういう若い人たちの期待を裏切らないように、万博の運営をしていきたいと肝に銘じた次第です。
 どの作品も非常にレベルが高く、どれを選択するか、私も非常に迷ったところでございますが、今日は、審査委員にお呼びいただきありがとうございました。

③林家きく姫さま(林家木久扇・きく姫賞選出)

 本日は、わたしの師匠林家木久扇88歳が、名古屋に行っていて、今日は、師匠に代わって、清き一票を入れて来るようにと、仰せつかってやってまいりました。
 わたしが、師匠なら、これだ!と、確言する作品を選ばせていただきました。
 もちろん、すべての作品が素晴らしかったのですが、とくに発想力、動物で文字を作っていくというところに面白みがある。うちの師匠もしゃれたものが大好きなので、必ずこれを喜んでくれると思いました。それに、師匠のイメージカラーの黄色が活きていますので。
 今日はみなさまとお時間を過ごさせていただいたことを大変光栄に思っています。師匠も2月16日の表彰式の際には一緒に伺うと申しております。一度くらい東大に足を踏み入れてみたいとも。どうぞよろしくお願いいたします。

④ファッションデザイナーコシノヒロコさま(コシノヒロコ賞選出)

 わたしの選んだ作品のテーマは、「働きがいも経済成長も」という2つの言葉でできたSDGs目標8。このテーマ自体が、全く違う世界を極端に表しているように、わたしは思います。
 どんなに働いても、戦争のために働くのであれば?本当は嫌なのに、働きがいなんてないのに、働かなくてはいけない人もいます。
 (絵のなかの) うしろで燃えているように見える赤は、戦争で焼けただれたなにかのようすのように思います。胸にツンとくるような絵です。経済成長を考えるあまりに、こういった結果が出てくるのは、非常に問題があるということを、子どもが訴えているというのが、すごい、と感じます。ポスターとしてのインパクトという点でも、すばらしい。テクニック的にも、強い、色の使い方が非常にうまいと思います。そして、バランスがいい。ポスターの目的である「訴える力」があるのではないかと、わたしは思って。
 細かいことを自々と言うよりも、ワンポイントで胸に突き刺さるような、そういうものを感じたので、わたしは、このポスターを選ばせていただきました。

⑤服部栄養料理研究会会長服部津貴子

 本日はみなさま、おつかれさまでした。ありがとうございました。私自身大変いいお勉強をさせていただきました。小学生と中学生がこんなにすばらしいポスターを作れるんだな、ということを認識しました。
 全部自分で描いたのかしらと思った作品もありましたけれど、そこには、子どもたちの思いがこもっているものだと思います。
 ここにこれだけたくさんのポスターが集まっていますが、予備選考ではこの20倍ほどの数があったとお聞きしてとても驚きました。
 そういう審査の最終段階に立ち合わせていただいたことは、私自身、とっても嬉しいことでございました。
 いま世の中いろいろありまして、世界の各地で戦争もありますし、日本は円安ですし、日本の地位が低下していると感じてがっかりしてしまうようなこともあります。
 ですが、子どもたちが日本のために、地球のために頑張ってくれているんだな、ということを垣間見ることができまして、日本は決して捨てたものじゃないな、地球のことを思ってくれている子どもたちが、たくさんいるんだな、ということも本日認識できて、とてもあたたかい気持ちになりました。

 本日はありがとうございました。

⑥児童文学作家 藤真知子

 今日ははじめて参加させていただいたのですけれど、みなさんのポスターが本当にすばらしく、びっくりしました。私は、よく子どもの書いた童話などの審査員をします。ですから親や先生の手が入ったというのは、わりとすぐにわかるんです。
 でも、今日は、そういうのはあまりわかりませんでした。小学1年生にしては上手すぎるという指摘もありましたけれど、有名な画家さんのなかには子どもの頃からすごい絵を描いている方もいらっしゃると思いながら見ていました。私は、孫を連れてよくバイキングに行きます。私は「好きにとればいいじゃない」と言うのですが、孫は「だめ、世界には食べられない子がいるんだよ」と言う。いまの子どもたちは、小学校でそういったことを習っているんだな、と思っていたのですが、今日の応募作品を見ても、子どもたちはすごく意識が高いことがわかり、感動しました。
 最近、私の環境の絵本は、日本よりも中国・台湾・韓国の方が人気があると感じたことがありました。でも、日本では、SDGs が提唱されるよりもずっと前から、ESD を世界に発言していたんですね。そんなことを思い出させられた、すばらしいイベントだなと思いました。本当に今日はありがとうございました。

 なお、各先生の冠賞であっても、その先生だけではなく、審査員全員の目をとおったものが選ばれています。また逆に、冠賞を選出なさる先生方も、最終選考会に進出した作品の全てに目を通され、他の各賞の確定の合議に参加されるという形で審査を進めました。
 どの方にも共通するのは、受賞された方だけでなく、心を込めて応募してくださった子どもたちへの労をねぎらう言葉を口にされていたことです。
 様々な視点からのコメントを、受賞された皆様のはげみに、また、これからポスター作成に挑戦しようという方のご参考にしていただければ幸いです。

SDGs全国子どもポスターコンクール実行委員会事務局